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土壌を危惧する
12.12.2010 (Sun)

内田樹の「街場のアメリカ論」という文庫を読んだ。その中にアメリカにおけるキリスト教の歴史について書かれた章がある。

西部開拓が行われ厳しい生活が強いられていた19世紀前半、人々は教養および宗教的生活から程遠い心理状況に陥っていた。そんな社会的背景において、宣教師達は厳粛に小難しい教義を説くことを止め、より「原始的」で、より「感情的」な「恍惚感」を強調する存在に変わっていったという。

つまり宣教師たちは、小難しいセオリーを生真面目に語る存在から、インパクトがあり、大衆受けのするキャッチーな存在に変わった。そして最後は、最もアイコニックな宣教師が一時の成功をおさめた。

「原始的」とか、「感情的」だとか、なんだか今もてはやされている建築家像に似ているではないか。

今建築を受け止める土壌は、文化的な活動の枯渇した19世紀のアメリカ西部の様な状況なんじゃないか?レム・コールハースがアイコニックな存在を危惧するのは、アイコンそのものを批判している以上にアイコンを求めてしまうような土壌を危惧しているのではないか?

といつもの公園でジョギングをしながら考える。

土壌を危惧する_d0183261_8254190.jpg


Top▲ | by murakuni1975 | 2010-12-14 08:55
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