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空気のような写真家 : ナン・ゴールディン
11.12.2010 (Sat)

先週末に出かけた写真の展示では、どこにでもある日常を撮った写真に批判的な立場をとるロッテルダムの次世代の写真家の作品を沢山見た。

そんな彼らが言う日常の写真を撮る元祖みたいな存在である、アメリカの女性写真家ナン・ゴールディン (Nan Doldin) の大規模な個展がロッテルダムにある写真美術館で開催中だ。同僚達と見に行く。

彼女の作品はプリントされたもの以上にスライドショーとして見せるものがメインの作品として扱われていた。彼女のセレクトによる曲とセットになったスライドにはとてもナマナマしい日常が次々と映し出される。彼女自信も大ファンだというBjorkの曲に合わせてつくられたスライドが中でも印象的だった。特にこのリンクの2:00ころから現れる若いカップルをとった一連写真がとても心に響く。

一体どうやって撮っているんだろうと思うほど、写真家はその場面から消え去っている。ものすごい迫力で映されている人達の幸せそうでリラックスした感情が伝わる。映されている人達は皆完全に写真家の存在を空気のように扱っている。それがすごいと思う。

彼女は決して戻ることのない日常の出来事を記録に留めようとシャッターを切り続ける。それは限られた生きる時間だったり、二度と訪れることの無い初恋の思い出だったり様々である。

日常と簡単に言えるものでもない。日常はいつでもどこでも簡単に転がっているものでもない。そんなことを考えさせられる。日常やいわゆる普通と呼ばれる物事の中に普通など無いという強烈なメッセージがそこには潜む。すべては二度の戻ることのない特殊な瞬間なのだ。そんなことを彼女は空気のような存在になって伝えようとしているのではないか。

例えば建築家は、彼女が成し得たように、人々の日常を支え、輝かせ、そしてなおかつ空気のような存在になり得るだろうか?


空気のような写真家 : ナン・ゴールディン _d0183261_983242.jpg


Top▲ | by murakuni1975 | 2010-12-13 09:23
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